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『当事者として、JSAGは「システムアナリスト」についてこう考える
〜日本システムアナリスト協会からの提言〜』



 

  はじめに
 
     本提言は、日本システムアナリスト協会において、現状のシステムアナリストの実態を踏まえ、システムアナリストの人材像や役割、さらには試験そのものに対してとりまとめたものである。
近い将来、情報処理技術者試験に対する制度改革が検討される際に、ぜひ本提言の考え方を取り入れて、対応いただきたいと考えている。
 
 
  「システムアナリスト人材像」に対する提言
〜「システムアナリスト」とはいったい何なのか?本当に必要な人材なのか?〜
 
  1.まずは「システムアナリスト」という名称を問いたい
 
<論点>
ITスキル標準には、職種として「システムアナリスト」は定義されてない。
一方で、情報処理技術者試験においては、明確にシステムアナリストとしてのスキル標準が定義されている。このような状況において、そもそも「システムアナリスト」という名称は適切なのか。また、実態と異なるということがあるのであれば、別途適切な名称を付与し、試験とITスキル標準で共通の定義をすることが必要なのではないか。
 
<提言>
名称は従来どおり「システムアナリスト」でよい。理由は、情報処理技術者試験の区分としてすでに定着している名称であり、ここで別の名前に変えても、本質的には変化はない。ただ、その役割や人材像というものは、深く追求していく必要がある。
今後継続的に、日本システムアナリスト協会が考える「システムアナリスト像」を追求していきたい。
なお、本提言そのものも、現時点における、システムアナリスト協会の考える「システムアナリスト像」である点を付記しておく。
 
 
  2.ITスキル標準の職種定義と切り離されていていいのか?
 
<論点>
ITスキル標準の職種で、システムアナリストに明確にマッチするものがない。コンサルタントか、もしくはITアーキテクトが近いようにもみえる。あるいは、アプリケーションスペシャリストの上位レベルの人材も近いように考えられる。ただ、いずれにしても、明確な定義づけがないので、人によって捉え方が異なっているのが実態である。
 
<提言>
今後のITスキル標準の見直し、あるいは試験の人材像とのマッチングに期待する。
ITスキル標準では、ベンダーサイドの人材をより意識したフレームワークである。しかし、現場のシステムアナリストには、もっとユーザ寄りのスキルが求められている。必要であれば、システムアナリスト協会も協力を惜しまないので、実際の業務を調査してほしい。現場の状況も踏まえて、ITスキル標準の見直しを行い、スキルフレームワークと試験制度を利用するエンジニアや組織に、わかりやすい情報提供をお願いする。その際には、情報処理推進機構(IPA)や試験センター、ITスキル標準センターから見たカスタマとは誰なのかを常に意識して欲しい。サービス提供サイドの内部でしか通用しない理屈は不要である。
 
  3.「システムアナリスト」とはプランナなのかストラテジストなのか?そして、そのあるべき役割・機能とは何か?
 
<論点>
人材像が一意に決まらないとはいえ、ある程度の目安や方向性は示す必要がある。「システムアナリスト」の役割・機能を今一度洗いなおし、そこから「システムアナリスト」の人材像をまとめていかなければならない。
 
<提言>
「システムアナリスト」とは、ストラテジスト兼プランナである。ただしここでいう「システム」とは、「コンピュータシステム」と「ビジネスシステム」の両方を指す。
「システムアナリスト」は、企業の情報システムに関して、戦略と計画を策定し実行する役割を負う。「企業」に限らず、公共団体等も含めた「組織全般」が対象である。
また、単なるInformation Technologyを対象とするのではなく、広義の情報システムを対象とする。
現在の試験センターのスキル基準からすると「個別システムの分析家」という印象がある。経済社会のグローバル化を考慮すると、組織全体の情報システムのあるべき姿を考えるような、もっと広い範囲をカバーする人材像の定義が必要である。
 
     
  4.システムアナリスト協会員(主に試験合格者)は本当に「システムアナリスト」なのか?
 
<論点>
試験には合格したものの、試験のスキル標準が謳っているスキルを持っている人材は、実は一部なのではないか。あるいは、「システムアナリスト」としてのパフォーマンスを提供している人材は、ほんの一握りなのではないだろうか。
 
<提言>
実際に、システムアナリストとして活躍している人は確かに多いとはいえない。また、システムアナリストのスキル基準が求めるものをすべて網羅している人材というのも非常に限られたものになっている。
ただ、試験にチャレンジし、また合格することにより、個々の動機付けやその個人を見る周りの目が変わってきているというのも事実である。
このあたりは、免許とは異なる能力認定の試験ということで、その意義が大いに表れているところではないか。
いずれにしても、試験合格者ひとりひとりが、それぞれの描く「システムアナリスト像」がイメージされ、自らのパフォーマンスに反映されているのであれば、なんら恥じ入る必要はない。逆に、自らの意思のない試験合格者は、本質的な意味での「システムアナリスト」とは言えない。試験センターとしても、こういった骨太の方針を示して、人材育成に取り組む必要があるのではないか。
 
 
  <参考:日本システムアナリスト協会員のコメント>
 
今回の調査において、システムアナリスト協会の会員からは、具体的には以下のような意見が上がってきている。参考までに掲載しておく。

・ 社内で大きな仕事を任されるようになった。
・ アナリストとしての目つきができてきた。
・ 対外的に能力、得意分野を示すことができた。
・ まわりの人の見る目が変わった。信用度が上がった。
・ 「スペシャリスト」でなく、広い視点でものを見ることができる。
・ 考え方などが提案書を書くのに役にたっている。
・ 資格を取ったことを公言することで、自分の質を高めることができる。
・ 教育研修部門から意見を求められるようになるなど頼りにされた。
・ 「アナリスト」という名称を名刺に入れると価値が上がる、商談のねたになる。
・ 周囲に対する「威厳」が得られ、人脈交流に活かせる。
・ 直接会社ではメリットはない。ただ、資格を取るために勉強したことは普段の仕事に役に立っている。
・ 人脈が広がった、書籍の執筆にもつながった。システムアナリスト協会に入会し情報交換できていることが役立っている。
・ 「システムアナリストでいたい」という気持ちを常に持っていたい。
・ 本人の気持ち次第。「システムアナリスト」だと思えばシステムアナリストである。
 
     
  5.ITコーディネータとシステムアナリストの違いを明確に示す
 
<論点>
システムアナリストとITコーディネータとの差異が分からない。それぞれに要求する役割、知識、スキルなどが明確に異なるものであれば、より明確な棲み分けを行うべきだろうし、同じものであれば、あえて別々の資格にする必要はない。
 
<提言>
試験制度などの定義では明確に分かれているはずである。この点を、もっと強調する必要があるだろう。
「明確に定義してある」と主張しても、世の中にそれが受け入れられていないのであれば、言っていないのと同じである。説明する努力をして欲しい。
 

<参考:我々が考えるITCとシステムアナリストの違い>
ITC:職業そのもので、従来のコンサルタント+システムアナリストの役割である。さらに、ベンダでもなく、ユーザでもないような第三者でなければ、その存在価値は希薄である。
システムアナリスト:技術者の技術認定、役割であり知識分野である。ユーザ企業における情報システム部門側の人材あるいはベンダという色
が強い。
 
 
 

     
「システムアナリスト試験」に対する提言 〜現状の評価と今後への提言〜
 
     
  1.試験全般にも、人材像の定義のぶれが波及しているのではないか?
 
<論点>
システムアナリストの人材像が、いまひとつ明確ではないことと関連して、試験問題全般にもぶれが生じているように感じる。
例えば、午後試験の問題は技術者のバックグランドがない人間にはとっつきやすい問題(特に午後)である。もう少し技術者側に寄った面を強化する必要があるのではないだろうか。極端に言えば、技術を知らなくても受かってしまう。
また、上級シスアドとシステムアナリストの試験は区別がつかない(特に、午後1)。
一方で、システムアナリストと異なった分野で仕事していて、これから勉強を始めよう、資格を足がかりに新たな道を模索しようという人にはハードルが高い。また、午後2の論文問題は実務経験がないとほとんど書けない。
以上のように、試験では、知識を問うのか、経験を問うのかが不明確な状態で、中途半端に感じられる。
 
<提言>
システムアナリストの人材像と試験の位置づけを、今一度明確に整理して欲しい。
ペーパー試験であるがゆえに、真に経験を問うことは不可能である。ならば、知識を問う試験であるとはっきり明言してしまうことも有効だろう。この場合、午後2の論述試験のスタイルも試験の位置づけにあわせて見直しを行う必要がある。
また、システムアナリストに必要とされるヒューマンスキルを考えると、人間関係たとえばコミュニケーションに関する点を問う問題を多く出題していくことも必要ではないか。 いずれにしても、情報処理技術者が経営的な知識をつけていくための登竜門というような試験の位置づけにしていくと誤解が少なくわかりやすい。  
 
     
  2.午前試験(四択)はやはり必要!ただし工夫の余地あり。
 
<論点>
 四択で、一般的な知識を問う午前問題がシステムアナリスト試験に必要かどうか。
 
<提言>
情報処理技術者として必要最小限の技術は知識として持っておくべきである。
その意味で午前試験は必要である。同様の観点から、午前全体では合格点であったとしても、ある出題分野で極端に評価の低い受験者は、午前試験を合格としてはならない。
また、午前試験免除の制度を拡大するというのはさらにバリエーションを検討してほしい。さらに、人材像として非常に似通っていると考えられる、上級シスアドとの共通化もあわせて考えてみてはどうだろうか。
 
     
  3.午後1試験(記述)は、以前よりレベルが下がった?
 
<論点>
午後1は国語力、読解力を問う問題となっているように感じられる。いかに早く読んで答えを見つけるかが問われている。しかし、情報システムにおけるプランナという人材像の前提に立てば、問うべきピントがずれているのではないか。 ここ数年、本人に採点と評価をフィードバックするようになって、採点側が採点しやすいような問題が増えてきたように感じる。もしもそうであるならば、本末転倒ではないか。
 
<提言>
1問あたりの解答時間を多く与えて、企画力を問うような形にする。具体的には90分1問選択で、分析能力を問う問題にするか、実際に図表を描いて説明するという問題とすることで、実務能力を問うことも可能である。
このような対処を行うことで、合格発表時期が遅くなるとか、試験にかかる手間が増えるとか、受験料が上がるとかいうことが現実的には出てくるかもしれない。しかしこれは致し方ない。本質的にシステムアナリストの能力認定を行っていくこと、そして合格者のレベルを維持することを考えるに、午後1試験の改善は必須である。
 
 
  4.午後2試験(論述)で経験を問えるはずがない!
 
<論点>
午後2で論文を書かせる事には、受験者のこれまでの経験を問うという意図がある。しかし、ここで問題になるのは、この試験で受験者の経験を本当に評価できるかという点である。
午後2試験で、知識のみを測るのか、あるいは経験まできっちりと評価するのかという点が、今後の午後2試験のあり方に大きく影響を与えるのではないだろうか。
 
<提言>
論文を書くということは「後戻りなく考え表現する」ということ。そして、システムアナリストにとって文章を書くという能力は重要である。その意味では、試験において論文を書かせるということは意味がある。同様に、書く速度が速い、字がきれいといったことも、他人に対しての表現力の要素と見るならば、これらも評価の対象としてよい。
ただし、2時間の論述で本当にその人の経験を問えるのかというと、はなはだ疑問である。とすると、あえて、この「経験を問う」という午後2試験の目的をはずすということを真剣に考えるべきではないか。
例えば、各問題のテーマや前提で自分の考えを問うとし、「経験」よりも「あなたの考え」を問うようにするのがよい。もし、あえて「経験」を測るのであるならば、面接を入れるしかないだろう。ただ、これは、評価する側の体制の整備も必要であり、情報処理技術者試験としての制度ではあまり現実的ではないと思われる。
したがって、午後2試験の目的は、経験を問うのではなく受験者の知識と考え方を問うと明確に打ち出すのがよいと、我々は考えるのである。
 
おわりに
 
  今回の提言で我々が最も主張したいのは、今後も継続的に、日本システムアナリスト協会が「システムアナリスト像」を追求していきたいということである。
言い方を変えると、我々「システムアナリスト」が自ら当事者意識を持って、我々のR&R(Role&Responsibility)と存在意義を明確にしていくということである。
情報処理技術者試験センターにおける、スキル定義や試験制度のあり方の見直しにおいては、我々の提言や指摘事項が明確に反映されていくことを期待したい。
 
  以上
     
  <日本システムアナリスト協会(JSAG)の紹介>
 日本システムアナリスト協会は、情報処理技術者試験の一区分であるシステムアナリスト試験の合格者を中心とするグループで、以下のような目的を持った人材の集まりである。
○情報化戦略・情報化計画等についての情報交換や相互研鑚によって実務能力の向上と人脈形成を図る。
○会員相互の議論や実践的な内容を通じ、システムアナリストの人材像、役割を明確化する。
○社会的な貢献を目指して情報発信、提案等の活動を行う。
○情報処理に関する他の有資格者や、その他の専門家の諸団体とも積極的な交流を図る。
2005年10月20日現在の会員数は459名で、そのうちシステムアナリスト試験合格者は358名(システムアナリスト試験合格者全体の12.4%)となっている。

 
 
 


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