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○開会前の風景

セミナー開始前 司会 久保田勝
○開会の挨拶
・ 安藤会長:
昨年は5周年事業として成果発表を行った。その中でシステムアナリストはどうあるべきか・どう位置づけられるべきかについての提言を行っている。本年は,新たに立ち上げたSABOK研究会の報告も予定している。産構審での議論や3つのスキル標準が並立している状況等,世の中の流れを踏まえてITを支える人材について,JSAGとしても積極的に発言してゆきたい。
・阿部関東支部長:
関東支部は支部の中でも人数が多いこともあって,こうしたオープンフォーラムを実施して(できて)いる面もある。毎月,研究会等を実施しているが,単に自分たち(関東支部のメンバ)のためだけに実施するのではなく,全国に発信してゆきたい。是非,他支部のメンバも都合がつくようであれば参加して欲しい。

JSAG会長挨拶 安藤秀樹
JSAG関東支部長 阿部智英子
○講演1
安藤 博様、株式会社リクルート 事業開発室 プランナー
題名「リクルートにおける人材育成の取り組みとUISS策定へのアプローチ」
<要旨>
・ システム部門の要員170名が,従来は事業ごとに独立・分散して配置されていた。今回,これを連邦制ともいうべき組織に変え,集中的ガバナンスを維持しつつ,オフィスは分散し,機動的システム対応ができるようにしようとした。
・ 問題意識としては,以下の4つの観点があった。
組織:仕事価値・魅力が曖昧
本人:キャリアパスが見えない
指導者:先輩が仕事を語れなくなっている
仕事の性質:短期に業績が見える他部門と異なり,成果が出るのに長期のスパン
・ これに対応した課題として,以下の4点を導出した。
コミュニケーションが量も不足しているほか,スキルも不足している
(システム部門の)周囲への影響力が低い
組織全体の価値観・風土等がIT人材の育成を阻害している面がある
育成のポイントとして,社内の仕事価値と社外での価値の接続が必要
・ これを受けて,3つREALというコンセプトを提示した。
Real Collaborations(組織内の「立ち位置」)
Real Works(仕組み)
Real Results(業績)
・ 改革案作成プロセスとしては,若手・中堅の6名のプロジェクトにおいて,「こうありたい,こうなりたい」という議論を重ねていった。
・ その結果,「Core 6」と呼ぶ,6つの職種を定義し(下記),各々の行動規範等も規定した(詳細は講演資料を参照)。合わせて,成長モデルと6段階のステップをマッピングし,ITSSを社内用に「翻訳」した形でスキルの可視化を志向した。
ITストラテジスト:構想練築者(将来のことを構想する)
ITイノベータ:新機軸導者(しんきじくみちびきもの)
ITプロデューサー:構想具現者
ITマイスター:臨界破戒者(ブレイクスルーを実現)
フィールドアドミニストレーター:真髄迫掘者
プロジェクトマネジャー:真義完遂者
・ 導入は3つのステップを経ているが,最も苦労したのが,「組織としての仕事価値や方向性の浸透」であった。現在,第一期生が誕生しつつあり,今回の取り組みを評価しようとしている。ITスキルとコンセプチュアル/ヒューマンスキルとの相関をマッピングしてみると,一見,モデル化できそうに見えるが,仔細に分析するとそれぞれの塊が不連続であり,単純に育成プログラム化はできないことがわかった。ただし,個人個人が,あるいは組織として不足している部分が可視化できたことから,もう一歩踏み込んで対策を検討しようとしている。
〜以下ではUISS作成プロセスがテーマ〜
・ 2002年のITSSの評価からアプローチしている。情報システムの役割が「合理化のツール」から「差別化のためのインフラ」というように大きく変わっていることを踏まえて議論した。
・ 当初「人材像」からのアプローチも検討したが,困難であり,機能面からのアプローチに切り替えている。その上で,体系化・可視化をキーワードにして,組織力の強化のための標準づくりを目指した。
・ レベル評価のところは,まだ議論しているところ。内容を精査しITSS2.0_2006との整合性をとりバージョンアップしてゆきたい。「導入活用ガイド(仮称)」の作成も検討している。また,研修体系構築のためのロードマップも示したい。
・ 前半の話に関連して,当社はUISSではなくITSSをベンチマークとして採用しているが,UISSを採用したとした場合,技術活用・ビジネスへの適用といった領域はカバーしていない(が,取り込むことはできる(資料を参照))。
・ UISS策定作業の中で感じたことは,以下の2点。
人は仕事を通じて成長する(経験が重要)
成長を左右するのは本人の気づきと環境
・ 最後にSABOK研究会への期待を述べさせていただく。最上流の工程がますます重要視される中,システムアナリストの役割も重要になってくる。これまで,システムアナリストの役割としては,ソリューション(手段)の提供という理解が一般的であると思うが,今後は,ビジネス観点が重要になってくる。何より,若い人がシステムアナリストを目指したくなるようになって欲しい。SABOKがそのようなものになることを是非期待したい。
株式会社リクルート 安藤 博様
○講演2
安保 秀雄様、日経BP社 日経エレクトロニクス 編集委員
題名「ETSSの概要とITSSとの違い」
ETSSとはどんなものか/製造業の企業でどう取り組んでいるか/
ITSSとの違い/スキル体系の運用の仕方/SABOKに対する期待
<要旨>
・ ETSS(組込みスキル標準)は,家電や携帯電話,自動車,ロボットなどを制御するソフトを開発するスキルを対象にしている。企業情報システム向けのITSSとは異なる。ただし,ソフト開発という面は同じであり,開発プロセスやプロジェクトマネジメントなどの基本は変わらない。大規模化,複雑化しているのに基盤(プラットフォーム)が軟弱という問題にも直面しており,ITと同じ悩みを抱えている。また,組込み機器は,機械(メカ)・電気(エレキ)・ソフトで構成され,いつもソフトにしわ寄せが来るが,その割に社内での立場があまり強くなかったりする。情報システムとは対象が異なるものの,悩みは似ている面がある。
・ ETSSは,@スキル基準,Aキャリア基準,B教育・研修基準の3つから成る。このうちスキル基準を重視して最初に作った。スキル基準は,(a)技術要素,(b)開発技術(SLCP),(c)管理技術(PMBOK等)からなる。ETSSでは個別の技術を「指導のもとに実施できる」「自律的に実施できる」など4段階で評価する。ITSSもITSS2.0_2006ではスキル編が入り,ETSSに近づいた面があるが,スキル編にはレベル評価の規定はない。ETSSは個別の技術のレベルをまず重視し,ITSSは職種ごとのスキルの規定(キャリア・フレームワーク)を重視している。
・ETSSは,組み込みソフト業界の特性も勘案して,企業ごとのカスタマイズを想定したつくりになっている。また,ETSSには,達成度指標がない。ものを作れるかどうかを評価するが,プロジェクト規模の経験などの指標を作らなかった。
・ 企画→製造・開発→運用というV字型のプロセスを想定すると,ITSSがV字の上部領域を重視しているのに対し,ETSSは下部領域を重視しているとも言われている。ETSSが対象としている業種(メーカーが多い)にとって,リコールは命とりであり,QCDをいかに確保するかという視点が強い。このように,ITSSとETSSは業界の違いを反映したものになっている。
・ ETSSの使い方としては,自社に必要なスキルを定義し,それを組織と個人が共有している企業の例がある。このようなベクトル合わせに意義があるのは,ITSSでも変わらない。例えば,金融機関の中には,保守・基盤整備等の地味で日の当たらない仕事を,その会社で大切な仕事であるとスキル標準のなかで定義した。このように自社では何が大事にすべきなのかを見つめ直すことにスキル標準を使わねばならないと思う。
・ SABOK研究会への期待を述べさせていただく。
・ 企業情報システムの現状を見ると,システム部門は3K職場という評判が定着しつつあり学生の人気もない。ほかにも「不条理なコンピュータ」で連載したように,経営におけるIT活用のイメージができておらず,開発が混乱し,出来上がったシステムがちぐはぐになっている。システムが肥大化し,経営の変化にシステムが追いつかない場合も多い。
・ ソフトは目に見えないので,目に見える都市で例えてみると,企業情報システムは東京の街並みのようにちぐはぐになっており,それが3K職場の原因になっていると思う。欧州の街並みは,アーキテクチャがしっかりしていて安定で,住やすく何百年にも渡って継続的に発展している。情報システムもそういうアーキテクチャや構造になるといいなと思っている。SABOK研究会には,是非そのような情報システムを作るためのBOK構築を目指して欲しい。
・それによってシステム部門は,ビジネスのあり方を見直して業務を円滑にまわすための仕組みを構築するという本来の役割を担いやすくなり,3K職場とは言われなくなると思う。
日経BP社 安保 秀雄様
○着任挨拶と試験の最新情報
金澤 信様、情報処理推進機構(IPA)情報処理技術者試験センター
・ これまでの経歴から,ものづくりの現場に訪問させていただいた経験があり、その中でも大田区の例のようにITに無縁な中小企業が世界的な競争力を持っている半面,グローバル企業がIT活用に悩んでいる例もあることに関心がある。また、10年以上前に,情報処理振興課在籍時において,今回議論されているような人材像について議論に多少関与させていただき、試験制度の見直しにもつながったことを思い出す。
・ 現在,産構審の人材WGで議論されているが,産学連携と供給側のIT産業だけの議論にとどまらない人材育成をどうするかも重要な検討課題となっている。
・ 最近の試験実施状況に関しては,受験者は減少傾向にあるものの受験率は上昇する傾向が強まる等の変化がおきている。また、現在,中国・インド・シンガポール等との試験制度の相互認証を実施しているほか(それによってビザの制約を緩和),タイ・フィリピン等ASEAN諸国とは,今年から日本の試験制度をベースとした共通統一試験の実施を開始した。
情報処理推進機構 金澤 信様
○UISS,ETSS,ITSS に関するQ&A
安藤 博様、 安保 秀雄様、 金澤 信様

情報処理推進機構 日経BP社 株式会社リクルート
金澤 信様 安保 秀雄様 安藤 博様
質疑(回答者の敬称略)
■ ITSSの活用方法についてだが,単に社内の(キャリア)ロードマップとして活用されるにとどまるのか。人材の流動化の動きもあり,(中途)採用の際の基準としては使わないのか。
A(安藤様):
リクルート社の事業を考えると,是非取り組むべきだと考える。UISSが全てのユーザ企業のスタンダードになるには,なお時間を要すると思われる。企業の側も,こうした基準を用意してはいても,人材の流動化までは前提にしていないようだ。
A(安保様):
ITSSを下請企業の要員調達に使っている例は知っているが,求人に使っている例は知らない。ETSSは,内容がより具体的なので,こちらは使おうとする企業も出てくる可能性はあると思う。
A(金澤様):
究極の目標としては,あり得ると思うが現状はまだそこまで行っていないのでないか。
■(質問者の勤務先では)ITSSを社内の人事評価に活用している(評価ウェイトは1/3程度)。若い職員には評判は悪くないが,年配の職員層からは,それだけでスキルが評価できるのかといった不満が多い。リクルート社では,スキル標準は人事に連動しているのか。
A(安藤様):
スキルインベントリーは評価には使っていない。連動できるかどうかの検証は行い,連動できることは確認しているが,あえて連動させなかった。人事評価に関する考え方も,能力重視から業績重視に変わってきているが,(新たな制度による評価をした場合の)結果の信頼性については,まだ万人に納得してもらえるとは思わなかった。結果そのものはオープンにしており(つまり,本人以外も見ることができる),自己評価の低い人が,適正な評価に気づくという効果はある。
A(安保様):
透明性のある評価制度とした場合に,全員が納得できるものになるのならよいと思う。ただし,妥当な評価はやはり難しく,処遇との連動は難しいという声はよく聞く。当面は分離して考える方がよいと思う。
A(金澤様):
産構審小委員会に報告されたスキル評価ガイドラインの作成に向けた議論の際にも両論があったと聞いている(企業が自主的に行うか又は全体のガイドラインを作成するか)。資格試験とは異なり,業務経歴部分をどう評価するのがポイントと思う。
■プロジェクトチームを組成するとき,ITSSが活用されているか(プロジェクトに必要なメンバー構成を検討する際の基準として)。もし活用されているとしたら,どのようなやり方か。
A(安藤様):
正直言って,自信はない。現実を想定すると,仕事と人的リソースでは,常に人的リソースの方が不足している。足りない部分をどうするかという点については,優先度の高い部分だけは内部調達するというやり方になる。唯一,プロジェクトマネジメントの基礎だけは,全職員に習得してもらうことを期待している(必要なスキルは,要件定義能力と既存システムに関する知識)。
■現在の(スキル標準が並立している)日本の現状は,ユーザ企業システム部門の弱体化が原因であると思う。今後,企業に対してUISSをどのように啓蒙していくのか(企業はUISSを欲しいとは思っていない)。また,試験制度に関しては,ユーザ企業の人間が受けたくなるように工夫できないか。
A(安藤様):
地道にやって行くしかない。その場合は,経営者へどうアピールするかがポイントになる(経営者にUISS自体を読めと言っても読むわけはないし)。また,企業側もUISSの活用を考えていく必要がある。すべてを自社で賄う必要はなく,アウトソースすべきところはするという選択肢を持てる。そういう検討をする際に,UISSを意識してもらえれば,使えるツールはある筈だと思う。
A(金澤様):
現在,二つの動きがある。@産構審での人材像の議論ではシステムを提供する側と提供を受ける側で必要な人材が異なるとの意見がある。AITSSと試験の整合性を取るべしという意見もある。また、3つのスキル標準を整合性を図る観点から,「新生スキル標準」を策定すべきという意見もある。これらの関係が整理されるのが,来年3月頃になろう。これらの議論を踏まえて試験制度の見直しを考えて行きたい。
A(安藤様):
先ほどの質問と同趣旨だと思うが,当社では人事評価とは連動していないので,人事評価としてのフィードバックはしていない。また後の質問については,当社の仕組みはあくまでセルフチェックが目的であるので,360度評価は実施していない。なお,ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルについては,上司と年2回ミーティングする中でチェックする仕組みである。
■マネジャーやプロジェクトマネジャーになりたがらない人が多い(増えている)。若い人が活き活きと働いている会社(の例)があれば,秘策を聞きたい。
A(安保様):
ベテランになると,プロジェクトがドタバタする「火事場」にやりがいを感じる人が,驚くほど多い。これでは3K職場というレッテルはなくならず,若い人はげんなりする。一方,着実にプロジェクトをこなせる能力の高い人は,「全体が見える人」という共通点があるようだ。こういう人がいる職場は,システム開発が順調でシステム化の意義もはっきりしており,システム部門でもベンダーでも若い人がのびのびとしている。ただし,こういう人は往々にして,役員の受け悪かったりして,処遇に関しては厚遇されてはいないケースが多い。(ベンダの場合,)いいシステムを作ると(商売の種である)保守が儲からないというパラドックスのようなこともある。結果として,こういう人たちは,会社を飛び出たりするが,あまり儲けられないので会社は大きくならない。優れた人材がどんどん認められ儲かる,という世の中になってほしい
○SABOK(システムアナリスト知識体系)プロジェクト状況報告

JSAG副会長 山本 康
<要旨>
・ (「SABOK」の定義を説明ののち),複数のスキル標準が並立する中,システムアナリストの位置づけが曖昧であるとの問題意識からスタートしている。実践的なガイドラインを目指し,JSAG(全国)の公式事業として取り組みたい。5年計画で作業をし,最終的には1冊のドキュメントにまとめる。
・ 今年度は,アンケートを実施しており,本日は,その結果を報告する(以下のとおり)。
@ 回答者は40歳代中心のITサービス会社勤務者
A システムアナリストの業務については,IS戦略策定・評価・実行マネジメントと個別案件企画・評価だというのが共通認識
B 「あるべき姿」と回答者の「現在の職務」にはギャップがある。
C 自分がシステムアナリストだと認識している人とそれ以外の人では,業務で行っている項目に関して,差異が出ている(IS戦略策定,評価,など)
D 同様に,システムアナリストに一番重要なスキルについて,コンセプチュアルスキルはともに第一位で同じだが,テクニカルスキル・ヒューマンスキルについては,システムアナリスト以外の人の方が重視しているといった差がある。また,ヒューマンスキルの個別スキルについても,第二位は,システムアナリストが「判断力・決断力」を挙げているのに対し,それ以外の人は「コミュニケーション」を挙げているといった差がある。
・ 来年度については,人材像についての認識を統一し,そのうえでSABOK目次案および記載項目の洗い出しを行う計画としたい。
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